ユーザ用ツール

サイト用ツール


サイドバー

past-exam1a:civil-law

民事法


平成26年度

次の[問1]及び[問2]に解答せよ。

[問1]
 以下の【事実】を前提として、(小問1)及び(小問2)に解答せよ。なお、各小問については、それぞれ独立した問題として、他の小問を前提とせず解答せよ。

【事実】
1 A社は、国産のブドウのみでワインを醸造し販売する会社であり、Bは、A社の従業員である。Cは、東京で30店ほどワインバーを経営する個人である。
2 Cは、自己の経営するワインバーで国産ワインをアピールするため、平成25年12月14日、A社に対し、国産のブドウのみで製造されたワインを1,000本仕入れたいと申し入れた。その後、CがA社を訪れて各種ワインの試飲をを行い、また、価格等についてA社との間で交渉が行われた結果、A社が、Cに対し、銘柄「甲」500本及び銘柄「乙」500本を代金370万円で販売することで交渉がまとまった。
3 A社は、平成26年1月15日、Cとの間で、上記交渉で決まった銘柄「甲」500本及び銘柄「乙」500本、合計1,000本(以下「本件ワイン」という。)を代金370万円でA社がCに売却する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。その際、本件契約において、A社はCの経営するワインバーの本店(以下「C本店」という。)に同年2月14日午後2時までに本件ワインを納入すること、及び、Cは同年2月17日に上記代金をA社に支払うことも併せて合意された。
4 A社は、平成26年2月14日、Bに対し、C本店に本件ワインを納入することを命じた。Bは、その支持に従い、本件ワインを配送用トラック(以下「本件トラック」という。)の荷台に積み込み、本件トラックを運転して同日午後1時過ぎにC本店に到着した。そして、Bは、Cに対し、「購入していただいたワインを納入しますが、どこへ下ろしたらよろしいでしょうか。」と尋ねたところ、Cは、「お宅のワインの味は当店のコンセプトに合わないので、受け取ることはできない。このまま持ち帰っていただきたい。」と回答した。これに驚いだBは、Cに対し、「今日のところは仕方がないので、ワインは持ち帰りますが、いずれA社より厳しい対応を取らせていただくことになるかと思います。」と述べて、本件ワインを本件トラックの荷台に積んだまま、本件トラックを運転してA社への帰路についた。
5 上記の4においてBが納入しようとした本件ワインは、上記2の交渉及び本件契約に従ったものである。また、上記4においてCが本件ワインの受取を拒否したのは、Cの経営するワインバーの売上げが低迷し、平成26年2月上旬にはCの経営状況がかなり悪化したため、上記代金370万円の資金を調達するのが困難であることが原因であった。

(小問1)
 Bが本件トラックを運転してA社へ戻る途中、Dの運転するトラックが反対車線から侵入し、本件トラックの側面に衝突した。この事故により、本件トラックに積んでいた本件ワインのボトルが破損し、本件ワインはすべて商品として売り物にならない状態でなった。この事故の原因はもっぱらDの運転ミスにあり、Bに過失はなかった。
 この場合において、A社はCに対し、また、CはA社に対し、それぞれどのような請求をすることができるか検討せよ。

(小問2)
Bは、本件トラックを運転してA社へ戻る途中、居眠り運転により本件トラックをガードレールに接触させる事故を起こした。この事故により、本件トラックに積んでいた本件ワインのうち半分程度のボトルが損壊し、これらは商品として売り物にならない状態になった。Bは、以前にも同様の事故を起こしており、今回の事故をA社に知られると、売り物にならないワインの価格分を弁償させられるばかりでなく、A社を解雇されるのではないかと恐れた。気が動転したBは、Cが本件ワインをすべて受け取ったように偽装することを思い付き、本件トラックを運転して山間部まで行き、周囲に人家のない丙土地(現況は畑として使われている。)の上に、丙土地の所有社Eには無断で、ボトルの損壊したものを含めて本件ワインをすべて投棄した。現在、丙土地には本件ワインのボトルが散乱しており、また、Bの上記投棄によって、丙土地でEが栽培している野菜(その価値は10万円程度とする。)が枯れる事態が生じている。
 この場合において、Eは、誰に対し、どのような請求をすることができるか検討せよ。

[問2]
 以下の【事例】を前提として、(小問1)及び(小問2)に解答せよ。なお、各小問については、それぞれ独立した問題として、他の小問を前提とせず解答せよ。

【事例】
 Y社は、平成10年に設立された各種モーターの製造・販売を業とする株式会社である。設立当初は従業員10人足らずの零細企業で、本社も借地上に建設した平屋の工場に事務所が併設されている状況であった。しかし、製造技術の高さが評価され、大手の電気製品メーカーとの製品供給契約を締結するなど、順調に業績を伸ばし、平成18年には本社工場の敷地を買い取り、敷地内に工場とは別棟の事務所建設するとともに、さらに平成23年には、本社工場が手狭になったため、近隣に第二工場を建設すべく土地を取得した。その上で、平成23年10月に、X建設との間で、第二工場の建設工事について、工事代金を1億円、竣工・引渡しを翌平成24年10月とする建築請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。なお、工事代金については、契約時に前払金として3,000万円を支払い、出来高に応じて支払うこととされていた。
 平成24年10月に大二工場は予定どおり完成し、Y社に引き渡されたが、引渡しを受けた直後に床面において亀裂が発見されたことから、Y社において点検をしたところ、床面に指定していたコンクリートが用いられず、Y社に無断で強度の乏しい素材が用いられていた上に、埋込配線においてY社が指示していたケーブルが埋め込まれていないなど、複数箇所に及ぶ瑕疵があり、その修補に要する費用は相当額に及ぶものと見込まれた。そのため、Y社は工事代金の支払を拒絶し、X建設との間で瑕疵の処理について交渉を試みた。しかし、X建設は、Y社が瑕疵として主張する床面素材やケーブルについては、そもそも指示が明確になされておらず、X建設としては、契約内容及び工事仕様書に従って工事を完成させたと主張し、瑕疵の修補ないし損害賠償の支払に応じようとせずに、逆に、工事残代金の支払いを強く求めてきた。その後、数度に渡り交渉を重ねたが、結局交渉はまとまらず、平成25年2月にX建設がY社を被告として、工事残代金1,000万円の支払いを求めて訴えを提起した。
 これに対して、Y社は、工事残代金については、工事期間中に出来高に応じて6,200万円を支払っており、残額は800万円であるとして残代金額について争うとともに、建物工事に瑕疵があり、瑕疵修補に代わる損害賠償債権1,000万円が発生しているので、これを反対債権として相当額で相殺する旨の抗弁を提出した。
 Y社の主張に対し、X建設は、工事期間中に6,200万円が支払われたことは認めたが、うち200万円については、Y社の依頼による追加工事の代金として受領したものであり、本件請負契約の工事残代金額は1,000万円であると主張するとともに、工事に瑕疵は存在しないとして、Y社が相殺の自働債権として主張する、瑕疵修補に代わる損害賠償債権1,000万円の発生を争った。

(小問1)
 最場所は、審理の結果、工事期間中にY社からX建設に6,200万円が支払われたことを前提に、うち200万円はY社の依頼による追加工事の代金として支払われたものであるとのX建設の主張を認め、本件請負契約の工事残代金額は1,000万円と認定した。他方、Y社が主張する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、その額を600万円と認定し、その限度で相殺の抗弁を認め、Y社に対して400万円の支払いを命ずる判決をし、そのまま確定したとする。(以下「前訴①判決」という。)。
 ところが、その後において、Y社が大二工場の瑕疵について精査したところ、第二工場の建設工事には、多数の瑕疵が存在することが改めて確認され、工場として使用するための修補に要する費用は、前訴においてY社が主張するとおり、1,000万円と見積もられることが判明した。そこでY社は、前訴①判決の既判力は、相殺をもって実際に対抗することが認められた600万円の範囲で生ずるに留まり、相殺の抗弁が認められなかった400万円の部分については、既判力の生ずるものではないと主張して、改めてX建設に対して、差額部分の400万円の支払いを求めて訴えを提起したとする。このようなY社の主張の是非について、訴訟法上の観点から検討せよ。

(小問2)
 裁判所は、審理の結果、工事期間中にY社からX建設に6,200万円支払われたことを前提に、うち200万円はY社の依頼による追加工事の代金として支払われたものであるとのX建設の主張を排斥し、本件請負契約の工事残代金額は800万円と認定した。他方、Y社が主張する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、Y社の主張どおり1,000万円と認定し、相殺の抗弁を認めて、X建設の請求を棄却する判決をし、そのまま確定したとする(以下「前訴②判決」という。)。
 ところが、その後において、Y社が大二工場の瑕疵について精査したところ、第二工場の建設工事には、前訴において主張したほかにも深刻な瑕疵が存在することが確認され、工場として使用するための修補に要する費用は、前訴においてY社が主張した額(1,000万円)を上回る1,500万円と見積もられることが判明した。そこでY社は、前訴②判決で認定された工事残代金額(800万円)を超過する700万円分の支払いを求めて訴えを提起しようと考えている。これに当たり、Y社としてはどのような主張をすべきか、想定されるX建設からの主張に言及しつつ、訴訟法上の観点から検討せよ。


平成25年度

次の[問1]及び[問2]に解答せよ。

[問1]
 甲土地を所有するAは、Bとの間で、代金3,000万円で甲土地をBに売却する旨の契約を結び、その1か月後、Bは、同契約に基づき、Aに対して代金3,000万円を支払い、甲土地の引渡しを受けた。その後、A が死亡し、CがAの唯一の相続人として甲土地を相続し、甲土地につき相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた。
 以上を前提として、次の(1)及び(2)に解答せよ。

(1)甲土地をめぐるBC間の法律関係を説明せよ。ただし、解答に当てっては、下記の設問(2)に記載された【事実】を考慮してはならない。
(2)その後、次の【事実】が生じたとする。この場合において、Bは、Eに対し、BからEへの甲土地の所有権移転登記を抹消するよう請求することができるかどうか、Eからの反論も踏まえつつ論ぜよ。

【事実】
1 BとCは甲土地の権利関係について話し合った結果、平成21年1月14日、BC間において、Bが500万円を支払い、甲土地につきCからBへの所有権移転登記がなされた。
2 平成24年2月頃、Bは、事故の経営する会社の資金調達のため、甲土地を売却することを決め、数社の不動産業者に対し、4,000万円を売却希望価格として売却の媒介を依頼し、買主を探し始めた。
 Bは当初、甲土地を売却した際に得られる見込みの譲渡所得に対する課税について、税制上の優遇措置の適用が受けられるものと考えていた。しかし、しばらくして、優遇措置の適用は受けられないどころか、かえって高率の税金を課せられることが確実であることが判明した。このためBは、甲土地を高額で他に売却しても、多額の税金を強いられ、納税後の純利益が大幅に減少してしまうことを懸念し、Bの会社の取引先に相談したところ、不動産取引に詳しいDを紹介された。Bは、Dに対し、甲土地の売却に伴う税金の負担を圧縮し、売却益をなるべく多く得られる方法を相談した。何度か相談を重ねるうちに、Bは、不動産取引に関するDの豊富な知識に感銘を受け、Dの巧みな話術も相まって、Dを深く信頼するようになった。
3 上記相談を持ちかけられたDは、Bに対し、次のような計画を提案した。①甲土地を代金1億2,000万円で買ってくれる買主を見つけた上で、形式上は、DがBから甲土地を代金4,000万円で買ったように仮定し、Dがその後さらに甲土地を代金1億2,000万円でこの買主に転売する。②転売代金1億2,000万円のうちから、諸々の税金をDが支払い、謝礼として、Dが1,000万円を受け取るが、それでも3,000万円程度は残るので、これをBに交付する、③この3,000万円程度の金銭は表に出ない裏金であるため、税金が課せられることもなく、Bの手に入ることになる、というものであった(以下、この計画を「本件計画」という。)。
 しかしながら、本件計画を提案する際、Dは、Bが自分を信頼しきっていることに付け込んで、本計画によればBに引き渡すはずの3,000万円程度の金銭を実際にはBに引き渡さず、自らだまし取ろうと企てていた。
4 Dから本件企画の提案を何度設けたBは、本件計画に従ったならば、表向きは甲土地をDに代金4,000万円で売ったことにするが、Dが他社へ転売したときの転売代金から表に出ない3,000万円程度の裏金を取得することができるため、Dが他社へ転売したときの転売代金から表に出ない3,000万円程度の裏金を取得することができるため、不正な方法ではあるけれども、税金の負担により甲土地の売却益が大幅に減少する分を穴埋めできると考え、平成24年9月上旬頃、Dの本件計画を応諾した。その後、BとDとの間でさらに具体的な段取りを話し合った後、平成24年9月19日、Bは、Dとの間で、代金4,000万円で甲土地をDに売却する旨の契約を締結し、その旨の売買契約書を作成した。しかしながら、下記6のとおり、Dは、同年10月30日、本件計画に反して勝手に代金額を下げ、代金7,000万円で甲土地をEに売り渡した。
5 Dは、Bが本件計画に応じることを決めた平成24年9月上旬から、甲土地を買い受けるものを探していたところ、Eが興味を示したため、同年9月下旬頃、Eとの間で甲土地の売買に関する交渉を始めた。交渉において、Dは、Eに対し、「甲土地は現所有者のBから自分が買い取り、あなたに転売することになっている。あなたへ転売する際の代金は7,000万円でよいが、経理場の都合などがあるので、売買契約書上の代金欄には1億2,000万円と書かせてもらいたい。」と提案した。Eは、実際の代金が7,000万円であれば構わないと述べて、売買契約書上の代金欄を1億2,000万円と記載することの意味を特に問うこともなく、Dの提案を了承した。また、交渉の席において、Eは、Bに電話をかけ、「Dから甲土地を買うことになったがよろしいですか。」と尋ねたところ、Bは、Eに対し、「よろしいです。資金調達を急いでいますので、なるべく早くお願いします。」と回答した。
6 その後、DとEとの間で数回の交渉がなされた結果、平成24年10月30日、DE間で、EがDから甲土地を7,000万円で買い受ける旨の契約が成立した。どう契約では、同年11月29日に、BからEへの甲土地の所有権移転登記と引き換えに代金7,000万円を支払うことが合意された。また、甲土地につきBからEへの直接の所有権移転登記をすることについては、Bも了承していた。
7 平成24年11月29日、B、D及びEは、乙銀行丙支店に集まった(なお、EがBに直接会うのは、この時が初めてであった。)Dは、BからEへの甲土地の所有権移転登記に必要な書類を調えた上で、Eから7,000万円の交付を受け、この中から4,000万円を同年9月19日付のBD間の契約の代金としてBに交付した。まもなく、Dは、B及びEに対し、甲土地については、所有権移転登記に必要な上記書類に基づき、同年11月29日付けでBからEへの所有権移転登記がなされた。
8 Bは、本件計画によれば、さらに3,000万円程度の裏金がもらえるはずだと考え、平成24年12月4日、Dの居宅を訪れたが、そこは既に引き払われていた。これに驚いたBは、Eに対し、「Dの話だともっともらえるはずだったので、その分を払ってほしい。」と要求したが、Eは、Dと合意した代金7,000蔓延は既に支払済みであると回答し、Bの要求を拒否した。その後しばらくして、Bは、Dの意図、すなわち、上記3のとおり、DがBの信頼に付け込み、本件計画によればBに引き渡すはずの3,000万円程度の金銭を実際にはBに引き渡さず、自らだましとろうと企てていたことを知った。
 結局、Bは、本件計画によれば受け取れるはずの3,000万円程度の金銭をDから受け取ることはできず、税金の負担により甲土地の売却益が大幅に減少する分をこの金銭で穴埋めできない結果となった。

[問2]
 以下の【判例】を前提として、次の【問】に解答せよ。

【事例】
 Xは、職場の定期健康診断を受診したところ、心電図の波形に異常があったため、A県立病院で精密検査を受けた。その結果、心室の一部に先天的な欠損があることが発見されたことから、Xは、A県立病院に緊急入院をし、欠損部分の修復手術を受けることとなった。ところが、手術中に大動脈から大量の出血が生じたため、欠損部分の修復をあきらめ、直ちに閉胸をし、後日あらためて再手術をすることとなった。その後、Xの体力の回復を待ち、再手術が行われ、無事に心室の欠損は治癒され、数週間の入院の後、Xは退院した。
 Xは退院後、1回目の手術での大量出血は、執刀医のミスにより大動脈弁が傷つけられたことによるものであるとして、A県を被告として損害賠償請求訴訟を提起した。この訴訟において、Xは、医療過誤を立証するため、A県立病院において作成され、県の監督部局に提出された上記医療事故に関する報告文章(以下「本件文章」という。)について、文章提出命令の申立てをした(文章提出命令の申立書には、文書の所持者として県の監督部局長が掲げられている。)本件文章は、上記医療事故について、その状況を県の監督部局に報告するとともに、A県立病院に設置されている医事紛争対策委員会の委員長が、同委員会の招集の必要性の有無を判断する資料とし、また、同委員会が招集された場合には、上記医療事故に対する今後の病院の対応や再発防止策を審議する際の資料とするために作成された内部文書であり、上記医療事故の概要、治療に関与したスタッフからの聴き取り調査結果、当該医療事故に対する病院の見解及び対応の検討、今後の見通し等が記載されている。

※注:A県立病院はA件の直轄下にある病院であり、病院長以下、医師等のスタッフはA県の職員であるとする。

【問】
 A県は、本件文書については、公務秘密文章(民事訴訟法第220条第4号ロ)に該当し、提出義務がないものとして争うことを考えている。そのために、A県としては具体的にどのような主張をなすべきか、公務秘密文書該当性の要件に即し、想定されるXからの主張にも言及しつつ論ぜよ。

【参照条文】
民事訴訟法 第220条


平成24年度

次の[問1]及び[問2]に解答しなさい。

[問1]
 文化事業を展開している一般社団法人Aは、事業の一環として、自己の所有する甲土地に博物館(以下「本件建物」という。)を建築することを計画している。
 以上を前提として、次の(1)および(2)に解答しなさい。なお、各設問についてはそれぞれ独立した問題として、他の設問を前提とせず解答しなさい。

(1) Aは、建設会社であるB社に本件建物の建築を依頼しようと考え、B社に打診したが、B社からは、本件建物は博物館という特殊な建物であるため事前に十分な調査をする必要あり、上記以来を受諾するに先立ち、まずは甲土地及びその周辺環境の調査をさせてほしいとの要望が出された。これを受けて、Aは、B社との間で、本件建物の建設に係る調査を目的として、甲土地を無償でB社に使用させる旨の契約(以下「本件契約」という。)を結んだ。B社が本件契約に基づいて甲土地の調査を始めたところ、甲土地と隣接する乙土地の所有者Cが、A・B社のいずれの了解も得ずに、甲土地の一角に自己の自動車を以前から継続的に駐車しており、これが甲土地の調査の妨げになることが判明した。
 この場合において、AはCに対し、またB社はCに対し、Cの自動車の撤去をそれぞれ請求することができるかどうかを論じなさい。

(2) Aは、平成22年4月、本件建物の建築を計画するに当たり、外部団体に補助金の交付を申請するとともに、建築士Dに対し、上記補助金の交付決定があったときには本件建物の設計・工事監理(※注)をDに委託したい旨を申し入れた。これを受けて、Dは、同年5月上旬、ガラス製品・資材の輸入販売等を営むE社に対し、本件建物の入口にイタリアの会社のステンドグラス(以下「甲」という。)を使用することを計画しているので設計に協力して欲しいと依頼し、E社はこれに応じて、社内で技術的な検討と見積もり作業を開始した。その後、同年5月下旬、Aは、上記補助金の交付の内定があったことから、Dに対して本件建物の設計・工事監理を委託し、Dは本件建物の基本設計を開始した。
 平成22年6月上旬、E社は、Dに対し、本件建物の完成(平成23年5月と予定されていた。)に間に合うように甲を納入するには、遅くとも同年7月上旬に甲の形状・寸法等の打合せや製作図の作成等の準備作業を開始し、同年10月上旬にイタリアの工場で甲の製作を開始する必要があることを説明した上で、この準備作業をE社が開始することについての了承を求めた。そこで、Dは、同年6月中旬、Aに対し、E社から受けた上記説明の内容を告げた上で、上記準備作業の開始をE社に依頼すること、及び、依頼後は別の業者を選ぶことができなくなることについて了承を求め、Aはこれらの点を了承した。E社は、Aの了承が得られたことを受けて、甲の製作図の本格的な作成や製造ラインの確保等の準備作業を開始した。そして、その後、当初の予定としては、同年9月上旬に本件建物の建築を施工する業者(以下「施工業者」という。)が決まり、Aと施工業者の間で、Aを注文者、施工業者を請負人として本件建物を建築する旨の請負契約が締結されると、E社は、この施工業者との間で、本年建物に甲を納入して設置する旨の下請契約を締結することとされていた(以下、この予定のことを「当初の予定」という。)
 ところが、Aは、平成22年8月下旬、本件建物のその後の運営は赤字が見込まれ、Aの収益を圧迫する可能性があることを理由として、本件建物の建築計画の中止を決定し、補助金交付の申請を取り下げた。
 この事態を受けて、E社は、Aが当初の予定に従っていればE社は施工業者と下請契約を結ぶことができたはずなのに、Aが本件建物の建築計画の中止を決定したため、甲の製作図の作成費用や甲の発注に関するイタリアの工場との交渉費用等、平成22年5月上旬から同年下旬までに甲の納入の準備作業等のために費やした200万円が無駄になったとして、Aに対し、200万円の賠償を請求したいと考えている。Aからの反論にも留意しつつ、E社の請求が認められるかどうかを論じなさい。

※注:工事監理
 工事を設計図書と照合し、工事が設計図書どおりに実施されているかどうかを確認すること(建築士法第2条第7項参照)


[問2]
以下の【事例】を前提として、次の(1)~(3) につき、訴訟法上の問題に絞って解答しなさい。なお、各設問については、それぞれ独立した問題として、他の設問を前提とせず解答しなさい。

【事例】
X社は、平成5年に設立された自動車部品の開発・製造を業とする株式会社であり、エンジンの燃料噴射制御装置について特許を取得するなど、先進的な技術分野における高い技術力を支えに、業界においても堅実な地位を築いてきていた。平成20年頃からは、新たにハイブリッド・エンジンの制御技術の開発に着手し、研究を進めてきたが、次第に従来の研究施設では手狭になってきた。そこで、設立当初から取引のある研究機器の販売会社であるY社の勧めもあり、隣接する土地を購入し研究施設を増設することとした。これに当たり、土地購入資金の一部としてY社から1,000万円を借り受け、3年間で分割弁済をすることとなり、平成21年5月1日付けで、その旨の消費貸借契約が締結され、同日融資が実行された(以下「本件貸付」という。)。
ところがその後、X社とY社との閑で、本件貸付の残金額をめぐり争いが生じ、X社は、(ア)平成22年5月1日に金200万円を、(イ)同年6月l日に金500万円を、そ れぞれY社に弁済したので、残存元本債務は300万円であるところ、Y社が残債務はそれよりも多いと主張するため、Y社を被告として、「xのYに対する本件貸付債務の残存元本は金300万円を超えて存在しないことを確認する」旨の判決を求めて訴えを提起した。
これに対しY社は、(a)本件貸付に係る消費貸借契約には年利15%の利息を付する定めがあった、(b)x社主張の(ア)の弁済金200万円のうち、50万円のみが債務元本に対する弁済であり、残りの150万円は、貸金に対する年利15%の割合による利息として受領したものである、©x社が主張する(イ)の500万円の弁済については確認できない、と主張した。

(1) 本件訴訟につき裁判所が審理を進めた結果、Y社が主張する(a)及び(b)の事実が認められるとの心証が形成された場合、裁判所は本件貸付債務の残存元本が300万円を超えることは明らかであるとして、X社が主張する平成22年6月1日の金500万円の弁済の有無については心証が形成されていない段階であっても、直ちにX社の請求を棄却する判決をすることが妥当かについて論じなさい。

(2) X社の訴訟代理人は、第l回口頭弁論期日において訴状を陳述し、書証として平成21年5月1日付けの本件貸付契約書(以下「本件契約書」という。)を提出した。これに対し、Y社の訴訟代理人は、上記(a)~© を主張し、請求棄却判決を求めた。そこで、X社の訴訟代理人は、「y社の従業員Aが本件貸付を担当しており、上記(ア)・(イ)の弁済金も同人に対して交付した」として、Aの証人尋問の申請をした。裁判所はAについての証人申請を採用し、次回期日においてAの証人尋問を実施することとし、それまでに書証として提出された本件契約書を精査した。その結果、本件契約書の欄外に手書き文字で「'10.5.1. 200万円第1回済。'10.6.1. 500万円 ZOODX」 との書き込みがあることに気づいた。Aに対する証人尋問においては、X社が主張する2回の弁済に関する事実関係を中心に尋問がなされ、証人Aは、平成22年5月1日に金200万円を本件貸付の弁済として受領したこと、及び、同年6月1日にX社から確かに500万円の支払いを受けたが、この500万円は、実験機器「zooDX」の代金として受領したものである旨を証言した。なお、その後の審理期日においても、Y社の訴訟代理人は、6月1日にX社から実験機器「ZOODX」の代金として500万円の支払いを受けたとの主張はしておらず、Y社の記録からは6月1日に本件貸付金の弁済を受けたことは確認できないと主張するのみであった。
以上の審理を経て、裁判所が、平成22年6月1日に金500万円が支払われていることは認められるが、これは実験機器の代金として支払われたものであるとの事実認定に基づき、判決をすることは許されるかについて論じなさい。

(3 ) 本件訴訟において、「XのYに対する本件貸付債務の残存元本は金300万円を超えて存在しないことを確認する」旨の判決がなされ、確定したとする。その後、Y社がX社を被告として、本件貸付の残金300万円の支払を求める訴えを提起した場合、この後訴において、X社は残債務は100万円であると争うことができるか。自己と反対の見解についても留意しつつ論じなさい。


平成23年度

 Aは、自己の所有する土地(以下「本件土地」という。)を、経営する工務宿の資材置場としてこれまで使用してきたが、本件土地では手狭になり資材置場を別の土地に移した。そのため、平成21年5月以降は本件土地を使用しておらず、本件土地の売却先あるいは借受先の紹介を周囲に依頼していた。その後、知人の紹介により、Aは、平成22年10月14日、建設業を営むBとの間で、本件土地をBに賃貸する旨の契約を締結し(以下「本件賃貸借契約」という。)、本件土地をBに引き渡した。本件賃貸借契約の締結に先立ち、Aは、本件土地に廃棄物が置かれることを恐れて、その旨をBに問い合わせたところ、そのような廃棄物を置くつもりはなく、これから建築に用いる資材のみを保管するものであるとのBの回答を受けたので、本件賃貸借契約の締結を決断していた。また、Bの弟Cが同日、Bが本件賃貸借契約に基づき負担する債務につき、連帯保証した(以下「本件連帯保証契約」という。)。ABC間で交わされた契約書は【資料】のとおりである。
 以上を前提として、次の(1)及び(2)に解答しなさい。なお、(1)と(2)は相互に独立した問いである。

(1)  Bは、本件賃貸借契約を締結した当初は、本件土地を資材置場として使用していたが、平成23年2月末、建設業の不振により本件土地の賃料の支払が苦しくなったことから、Aには秘したまま、本件土地を転貸して転貸料を取得しようと考えていたところ、Bの叔父Dが、資材置場として本件土地を使用したいと申し出た。そこで、Bは、平成23年4月15日、Aには告げることなく、Dに対し、賃料を月額25万円、使用目的を資材置場、契約期間を1年として、本件土地を転貸した。Dは、かねてより処分に困っていた、建築物の解体により生じた大量の廃棄物を本件土地に投棄し、これらの処分に要する費用を浮かせるつもりで、あったが、上記転貸借契約の締結の際には、そのことをBに黙っていた。
 Dは、平成23年4月下旬から5月中旬にかけて、コンクリートの塊、廃プラスチック、廃木材など、建設廃棄物を本件土地に投棄した。Dの投棄した建設廃棄物は大量に及ぶため、その撤去には相当の費用がかかる見込みである。また、これらの廃棄物には有害物質を含むものがあるため、その有害物質が雨水等を通じて本件土地の土壌に浸透し、既に本件土地に土壌汚染を引き起こしているか、今後引き起こす可能性がある。
 この場合において、Aは、B、C、Dそれぞれに対し、どのような請求をすることが考えられるか。B、C、Dそれぞれから出されるであろう反論を指摘しつつ、Aの請求が認められるかどうかを論じなさい。

(2) Bは、本件賃貸借契約を締結した当初こそ、順調に賃料を支払っていたが、次第に建設業が不振に陥るにつれ、本件土地の賃料の支払についても滞るようになっていった。Aは、他に借り手の心当たりもなかったことから、多少の遅れについては黙認していたが、未払賃料が半年分にも達するに至り、ついにBとCを共同被告として、請求の趣旨をiB及びCは、連帯してAに対し、賃料600,000円、及び各期の賃料につき弁済期の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金を支払え」とする訴えを提起した。
この訴訟の第1回口頭弁論期日において、Bは出頭せず、答弁書その他の準備書面も一切提出しなかった。これに対し、Cは、「Aの主張する請求原因事実はすべて認める。しかし、Cは保証債務の履行として、すでにAに対して未払賃料と利息相当損害金の全額を支払った」と述べ、証拠としてA名義で発行されたC宛の領収書を提出した。Bはその後の期日にも出頭しなかったが、証拠調べの結果、Cによる未払賃料及び利息相当損害金の弁済の事実が認められた。
 この場合において、Bに対する請求を認容する論理構成と、棄却する論理構成をあげた上で、いずれが妥当かについて、訴訟法上の問題に絞って論じなさい。

【資料】
土地賃貸借契約書・連帯保証契約書
賃貸人A (以下「甲」という。)と賃借入B (以下「乙」という。)は、次のとおり資材置場のための土地賃貸借契約を締結する。

第1条(目的) 甲は、その所有する後記物件目録記載の本件土地を、乙が営む工務屈の建設資材の置場として利用させる目的で、乙に賃貸し、乙はこれを賃借する。

第2条(賃料) 賃料は月額金100.000円とし、乙は毎月末日限り翌月分を甲の指定する銀行口座に振り込む方法にて支払うものとする。

第3条(賃貸借期間) 賃貸借期間は、平成22年10月27日から平成24年10月26日までとする。ただし、乙に賃貸借期間の延長の必要が生じた場合には甲乙協議のうえ延長することができる。

第4条(善管注意義務) 乙は、本件土地の使用については善良なる管理者の注意義務をもってこれにあたるとし、甲並びに近隣に迷惑を及ぼすような使用をしてはならない。

第5条(禁止事項及び契約解除) 乙は次に掲げる行為をすることができない。
(1) 本件土地を第1条記載の目的以外に使用すること。
(2) 本件土地を第三者に転貸し、又は第三者に賃借権を譲渡すること。
(3) 本件土地に建物その他の工作物を設置し、又は現状に変更を加えること。
2 甲は、乙が本契約に違反したときは、何らの催告をしないで直ちに本契約を解除することができる。

第6条(明渡し) 本契約が期間の満了により終了し、又は第5条第2項により解除されたときは、乙は直ちに本件土地を原状に復して甲に返還するものとする。

2 乙が前項の返還義務を怠ったときは、乙は甲に対しその明渡しをなすべき日の翌日から明渡し終了に至るまで、日割計算によって賃料額の2倍に相当する損害金を支払わなければならない。

第7条(連帯保証) 下記の者c(以下「丙」という。)は、本契約にもとづく乙の債務について、連帯保証人として乙と連帯してその責に任ずるものとする。

住所 △県△市△町△丁目△番△号
氏名 C

第8条(協議) 甲及び乙は、本契約に定めのない事項が生じたときや、本契約各条項の解釈につき疑義が生じたときは、信義誠実の原則に従い協議し、円満に解決を図るものとする。

第9条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、甲の住所地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに甲乙丙は合意する。

以上のとおり契約が成立したことを証するため、本書3通を作成し、甲乙丙各自署名押印のうえ、甲乙丙各自その1通を保有する。

平成22年10月14日

賃貸人(甲)
○県○市○町○丁目○番○号 A①(※注)
賃借入(乙)
口県口市口町口丁目口番口号 B②(※注)
連帯保証人(丙)
△県△市△町△丁目△番△号 C③(※注)

<物件目録>
土地の表示
所在 ×県×市×町×丁目
地番 ×番地
地目 雑種地
地積 ×××平方メートル
※注:①②③の箇所には、それぞれA,B, Cの印章が押されている。


平成22年度

 Aは、建築業者B杜との間で、自己の所有する甲土地に建物(以下「本件建物」という。)を建築してもらう旨の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。
 このことを前提として、次の(1)~(3)すべてに答えなさい。なお、(1)~(3)は相互に独立した問いである。

(1) B社はAに対する請負代金債権をCに譲渡し、Aはこの譲渡につき異議をとどめないで承諾をした。その後、資金繰りの悪化が原因で、B社による本件建物の工事は予定の工期よりも大幅に遅れ、完成まで5割程度進んだ段階でB杜は工事を中断してしまった。Aは、B杜に対し、工事を再開して本件建物を完成させるよう何度も促したが、B社がこれに応じないため、Aはやむなく本件請負契約を解除した(なお、本件請負契約の解除につき、AとB杜との聞に特約はなかったものとする。)。この場合において、Cが上記請負代金債権を行使し、Aに対して代金の支払を求めてきたとき、AC聞の法律関係がどうなるかを論じなさい。

(2) B杜は予定の工期に本件建物を完成させ、Aに引き渡した。半年後、本件建物の外壁の一部が崩落し、その崩落物が、たまたま本件建物のそばを通行していた大学生D (20歳)の右腕を直撃した。調査の結果、本件建物の外壁に使われた鉄筋コンクリートに、ひび割れによる鉄筋の耐力の低下、及び、鉄筋量の不足が見つかった。Dは、負傷した右腕の治療を受けたものの、右腕の動きが不自由になる後遺障害を負った。この場合において、Dは、A及びB杜に対し、どのような請求をすることができるかを論じなさい。

(3) 本件請負契約をめぐって、次の【事実経過】が生じたとする。
【事実経過】
 本件請負契約の締結を契機として、AはB杜の代表取締役Eと親しくなり、しばしばEと懇談する機会を持つようになった。そうした中、現在B社が中心となって建設業者数社からなる共同事業体を構成し、乙市の公共事業への新規参入を計画しているとの情報を得た。Eによれば、乙市の公共事業への新規参入がかなえば、かなりの利益が見込まれるが、そのための資金調達の目処がなかなか立たないとのことであった。Aは十分採算性のある計画と判断し、Eからの依頼もあり、8,000万円を融資することとし、Eの指定するB社名義及び共同事業体名義の銀行預金口座に数度に分けて、計8,000万円を振り込んだ。
 ところが、当初は計画が順調に進行しているという報告がなされていたが、次第に、Aが計画の進捗状況を尋ねても、Eは言を左右するばかりで明確な説明をしなくなり、Aとの面会も避けるようになってきた。Eに対する不信感を募らせたAは、明確な説明がされない場合には、融資金を引き上げる旨を申し入れたが、依然として明確な説明がなされなかったため、ついに融資した8,000万円の返還を申し入れた。しかし、EはAとの面会を拒絶し、8,000万円の返還にも応じようとしないため、AはB杜を被告として、貸金8,000万円の返還を求める訴え(以下「前訴」という。)を提起した。
 また、Eに対して決定的な不信感を有するに至ったAは、本件請負契約についても解除することとし、B杜に対して内容証明郵便により、本件請負契約の解除を申し入れた。これに対し、B社は契約の解除に伴う損害金の支払いを求めたが、Aがこれを拒絶したため、別途、Aを被告として損害賠償として4,000万円の支払いを求める訴え(以下「後訴」という。)を提起した。
 後訴の係属後、Aは、前訴において、「貸金債権は総額8,000万円であるが、本訴訟においては、そのうちの3,000万円のみを請求することとする」と請求の減縮の申立てをし、これに対して、B社も特段異議を述べなかった。その上で、Aは後訴において、B杜の主張に係る4,000万円の損害賠償請求自体を争うとともに、仮に損害賠償請求権が認められるとしても、前訴で訴求している貸金債権の残額を自動債権として対当額で相殺する旨の予備的抗弁を提出した。
 その後、前訴において、Aが訴求する貸金債権については、B社名義の口座に振り込んだ2,000万円のみがB社に対する貸付と認定され、2,000万円の限度でAの請求を認容する判決がなされ、確定した。他方、後訴については、その後も審理が続けられ、前訴判決の確定から4ヶ月後に口頭弁論を終結し、B杜の請求を棄却する判決がなされた。なお、後訴判決の理由は、B社の損害賠償請求権を3,500万円と認定した上で、Aの相殺の抗弁を認めるというものであった。

 この後訴判決を受けてB社は控訴を考えているとする。B社は、控訴に当たり、どのような主張をすることが考えられるか。訴訟法上の問題に絞り、想定されるAからの反論も指摘しながらB社の立場で論じなさい。


平成21年度

 Aは、平成20年4月10日、Bとの間で消費貸借契約(以下「本件消費貸借契約」という。)を締結し、2000万円を、弁済期同年6月9日、利息、年6パーセント、遅延損害金年10パーセントで借り受けた。その後、同日を経過したが、Aは弁済しなかった。
 以上を前提として、次の間題1~問題3 に解答しなさい。なお、問題1~問題3は相互に独立した問題である。

問題1
 BがAに対し、弁済期経過後の年10パーセントの割合による遅延損害金を請求する場合、Bは、請求原因として、以下の①~④を主張立証する必要があるか。それぞれについて、理由をつけて説明しなさい。
 ①平成20年6月9日が経過したこと。
 ②弁済期にAが弁済しないこと。
 ③弁済しないことがAの責めに帰すべき事由によること。
 ④AとBとが年10パーセントの遅延損害金の利率を合意したこと。

問題2
 Aは、Bとの間で、平成20年6月20日、本件消費貸借契約に基づく貸金債務、利息、及び遅延損害金の支払いに代えて、Aの所有する甲土地(時価1500万円)をBに譲渡するとの合意をしたが、甲土地の登記名義はA名義のままであった。Aはその後、Cとの間で、Cを賃借入とする甲土地の賃貸借契約を締結し、これに基づいて甲士地をCに引き渡した。
 下記の【参考判例】を前提として、ABC問の法律関係について論じなさい。

【参考判例】
 「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は、単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが…(中略)…、そのことは、代物弁済による所有権移転の効果が、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である・・・(以下略)」 (最高裁判所昭和57年6月4日第二小法廷判決・判例時報1048号97頁)

問題3
 本件消費貸借契約をめぐって、その後、下記の【事実経過】が生じたとする。
【事実経過】
1. Aは、平成20年6月13日、Bに対し、同年7月31日までに弁済すると申し入れたが、Bは信頼できないとしてこれを拒否した。そこで、Aは、同年6月16日、「平成20年7月31日までに当方がBより借用している金銭を支払えなかった場合、当方所有の乙土地の登記名義をB名義に変更すること、及び、Bの判断で第三者に売り渡すことを承諾いたします。」 と記載した書面を作成し、乙土地の移転登記手続に必要な書類と共にBに交付し、Bも、Aの上記内容の申込みを承諾した(以下、これによって成立した契約を「本件契約」という。)。しかし、上記期限を経過しても、Aは弁済をしなかった。
これを受けて、Bは、同年8月1日、Aから預かっていた上記書類を用いて、乙土地について同日付け代物弁済を原因とするAからBへの所有権移転登記(以下「本件第一登記」という。)を経由した。その後、Bは、本件消費貸借契約に基づく債権をAから回収できたならば本件登記の抹消に応じるとの意図に基づき、同年8月15日、Aに対し、同年9月4日までに乙土地を買い戻すことを要請した。しかし、Aは、この期限を経過しても、資金を調達して乙土地を買い戻すことができなかった。Bはなおも、Aに対し、本件消費貸借契約に基づく債務の支払があれば乙土地の買戻しに応じる意向を示し、同年11月13日には、Aより、利息分として20万円を受領した。
その後、Bは、同年12月24日にAに到達した書面により、平成21年1月26日までに本件消費貸借契約の元本2000万円および平成21年1月26日までの遅延損害金の合計額を支払えば、Aに対し乙土地の買戻しを認めるが、さもなければ第三者に対し乙土地を処分する旨を通知したが、Aからは何らの応答もなかった。そこで、Bは、平成21年3月30日、乙土地を代金8000万円でDに売却し、同月31日、乙土地について、BからDへの所有権移転登記(以下「本件第二登記」という。)が経由された。
2. このような事実関係の中で、平成21年5月1日、Aは、乙土地の所有権に基づき、Bに対して本件第一登記の抹消登記手続、Dに対して本件第二登記の抹消登記手続を、各々求めて、T地方裁判所に訴えを併合提起した(以下「本件訴訟」という。)。
本件訴訟の口頭弁論において、Bは、抗弁として、「Bは、Aから本件契約により乙土地の所有権を承継取得したものであるとし、本件契約はAがBに対し本件消費貸借契約に基づく債務の弁済に代えて乙土地の所有権を確定的に移転することを内容とする代物弁済契約であり、債権担保を目的とする契約ではない」旨を主張した。

これに対し、Aは、「本件契約の実質は停止条件付代物弁済契約であって、仮登記担保契約に関する法律(以下「仮登記担保法」とし寸。)の適用を受ける仮設記担保契約であり、本件における清算金の支払を不要とする特約は、仮登記担保法第3条第3項により無効というべきであり、清算金の見積額の通知がされていないのであるから、乙土地の所有権は、いまだAからBに移転していなしリ旨を主張して争った。
本件訴訟について、T地方裁判所は、A並びにB及びDの主張に基づいて【事実経過】1.の事実関係を認定した上で、本件契約については、AからもBからも主張のない「譲渡担保契約」であり、本件においてAが弁済期に債務の弁済をしなかったためにBは乙土地の処分権能を取得し、BがDに譲渡した時点でDは乙十地の所有権を確定的に取得しAは乙土地の所有権を喪失したと認定して、Bに対する抹消登記手続請求及びDに対する抹消登記手続請求の両請求とも棄却したとする。
この判決を受けてAはB及びD双方に対し控訴を考えているとして、Aは、控訴に当たり、どのような主張をすることが考えられるか。訴訟法上の問題に絞って述べなさい。

(参照条文)仮登記担保契約に関する法律(昭和五十三年六月二十日法律第七十八号)第一条、第二条、第三条




都庁採用試験wiki TOPページヘ

past-exam1a/civil-law.txt · 最終更新: 2015/06/16 22:17 by seiya